勤怠管理と賃金台帳 かんたん解説

タイムカードがなくても、賃金台帳は作れる
— 労働時間の記録と賃金台帳のつくり方

「タイムカード等による勤怠管理をしていないが、賃金台帳をどう作ればよいか」というご相談への回答です。法律が求めているのは「タイムカード」そのものではなく、日ごとの始業・終業時刻の記録と、それをもとに労働時間数と賃金を書いた台帳です。代わりになる記録・必須の記載項目・毎月の手順・保存期間を、図解と条文の根拠付きで1枚にまとめました。

3行でわかる結論

  1. まず「毎日の始業・終業時刻」を残す方法を1つ決めます。原則は上司の確認か客観的な記録(勤怠アプリ・パソコンのログ等)。手書きの出勤簿でも、条件を守れば認められます。
  2. 賃金台帳は8項目を書けば形式は自由です。氏名・性別・賃金計算期間・労働日数・労働時間数・時間外/休日/深夜の時間数・賃金の種類ごとの額・控除額。様式第20号を雛形に Excel や給与ソフトで作れます。
  3. 給与支払いのたびに記入し、3年(法律上は5年)保存します。作っていない・虚偽を書いた場合は30万円以下の罰金の対象です(労基法108・109・120条)。

01 まず結論02 記録の原則03 代わりになる記録04 自己申告の5ルール05 台帳の記載項目06 毎月の手順07 保存と罰則08 チェックリスト09 根拠条文

01まず結論 — 3つのステップで作れる

「タイムカードがない」ことと「労働時間の記録がない」ことは別です。記録さえあれば、賃金台帳は作れます。

記録する・集計する・台帳に書く、の3ステップを横に並べた図
図1 毎日の始業・終業時刻を記録 → 月ごとに集計 → 賃金台帳に記入。法律が求めるのは「正しい労働時間数」で、記録の手段は自由。

労働基準法は、会社に対して賃金台帳を作り、賃金計算の基礎となる事項(労働日数・労働時間数など)と賃金の額を、給与を払うたびに記入することを義務付けています(労基法108条)。しかし、労働時間を「タイムカードで」記録せよとは書いていません。

労働時間の把握方法を具体的に示しているのは、厚生労働省の「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン」(平成29年1月20日)です。そこでは、労働日ごとの始業・終業時刻を確認し、記録することを求め、その方法として「上司などが自ら確認する」「タイムカード・ICカード・パソコンの使用時間の記録などの客観的な記録をもとにする」を原則とし、やむを得ない場合の自己申告制も条件付きで認めています。

ポイント:やるべきことは3つだけです。①毎日の始業・終業時刻を残す仕組みを決める(第2・3章)、②月ごとに労働日数・労働時間数・残業時間を集計する(第6章)、③賃金台帳の8項目に記入して保存する(第5・7章)。

会社が備えるべき帳簿内容根拠
労働者名簿従業員ごとの氏名・生年月日・履歴など労基法107条
賃金台帳従業員ごとの労働日数・労働時間数と賃金の内訳。今回のテーマ労基法108条・労基則54条
出勤簿・タイムカード等(労働時間の記録)日ごとの始業・終業時刻の記録。賃金台帳の「労働時間数」の裏付けガイドライン4(1)(2)・労基法109条

※ 上の3つは「法定三帳簿」と呼ばれ、労働基準監督署の調査で最初に提示を求められる書類です。

条文を確認する
「使用者は、各事業場ごとに賃金台帳を調製し、賃金計算の基礎となる事項及び賃金の額その他厚生労働省令で定める事項を賃金支払の都度遅滞なく記入しなければならない。」労働基準法第108条(e-Gov 法令検索
「使用者は、労働時間を適正に把握するため、労働者の労働日ごとの始業・終業時刻を確認し、これを記録すること。」労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン 4(1)(厚生労働省

02労働時間の記録 — 「原則」と「例外」

記録の方法には優先順位があります。原則は「会社側が確認した記録」、例外が「本人の自己申告」です。

原則(上司の現認・客観的な記録)と例外(自己申告)を左右に分けた図
図2 原則は「上司が自ら確認」または「タイムカード・ICカード・パソコンのログなどの客観的記録」。自己申告は、やむを得ない場合に5つの条件付きで。

ガイドラインは、始業・終業時刻の確認・記録の方法として、次の2つを原則としています。

この2つによらず自己申告制(本人が自分の労働時間を申告する方法)をとる場合は、「やむを得ない場合」に限られ、第4章の5つの措置が必要になります。

もう1つの法律:医師の面接指導のために、会社は従業員の「労働時間の状況」をタイムカード・パソコンの使用時間の記録などの客観的な方法で把握し、その記録を3年保存する義務があります(労働安全衛生法66条の8の3・同規則52条の7の3)。こちらは管理監督者も対象です。賃金計算の観点でも健康管理の観点でも、客観的な記録が原則と考えてください。

条文・ガイドラインを確認する
「使用者が始業・終業時刻を確認し、記録する方法としては、原則として次のいずれかの方法によること。ア 使用者が、自ら現認することにより確認し、適正に記録すること。イ タイムカード、ICカード、パソコンの使用時間の記録等の客観的な記録を基礎として確認し、適正に記録すること。」ガイドライン 4(2)(厚生労働省 PDF
「事業者は、(略)厚生労働省令で定める方法により、労働者(次条第一項に規定する者を除く。)の労働時間の状況を把握しなければならない。」労働安全衛生法第66条の8の3(e-Gov 法令検索
「法第六十六条の八の三の厚生労働省令で定める方法は、タイムカードによる記録、パーソナルコンピュータ等の電子計算機の使用時間の記録等の客観的な方法その他の適切な方法とする。2 事業者は、前項に規定する方法により把握した労働時間の状況の記録を作成し、三年間保存するための必要な措置を講じなければならない。」労働安全衛生規則第52条の7の3(e-Gov 法令検索

03タイムカードの代わりになる記録

「いつ始めて、いつ終えたか」が日ごとに残る記録なら、形は問いません。会社の実態に合うものを1つ決め、必要なら組み合わせます。

勤怠アプリ・パソコンのログ・入退室記録・出勤簿の手書き・業務日報・メールやチャットでの報告、の6つのカードを並べた図
図3 タイムカードの代わりになる6つの記録。複数を組み合わせ、食い違いがあれば確認して直す。
記録の方法位置づけ向いている会社・注意点
スマートフォン・パソコンの勤怠アプリおすすめ客観的な記録(原則)無料〜月数百円/人。打刻・集計・台帳出力まで一体で、最も手間が少ない。GPSや位置情報付きなら外勤にも対応
パソコンのログイン・ログオフ記録客観的な記録(原則)事務職向き。PCを使わない仕事には不向き。ログの取得方法を情報担当者と確認
入退室の記録(ICカード・鍵の記録)客観的な記録(原則)「在社時間」の証拠になる。労働時間そのものとは限らないため、乖離があれば確認
出勤簿への手書き+上司の確認印現認による記録(原則)/上司が確認しなければ自己申告設備投資ゼロで今日から始められる。時刻(例:9:02〜18:15)まで書き、「○」だけの出勤簿にしない
業務日報(始業・終業時刻欄つき)自己申告(例外)日報文化がある会社向き。第4章の5ルールが必要
メール・チャットでの「始業します/終業します」報告自己申告に近いが送信時刻が客観的に残るテレワーク・直行直帰向き。送信時刻がそのまま証拠になるので、口頭より強い

これでは足りない

  • 出勤した日に「○」を付けるだけの出勤簿(時刻がない)
  • シフト表・所定労働時間をそのまま労働時間として記入(実際の残業が消える)
  • 記憶で月末にまとめて記入

これなら認められる

  • 日ごとに始業・終業・休憩の時刻が残っている
  • 本人以外(上司・システム)が確認または記録している
  • 残業した日はその分が記録に反映されている

過去の分はどうするか:これまでの期間についても、シフト表・日報・メールの送信時刻・入退室記録など残っている資料から労働時間数を復元し、本人に確認したうえで賃金台帳を整えます。残業していたのに固定給しか払っていなかった場合は、割増賃金の未払いが生じている可能性があるので、復元と同時に精算の要否を確認してください。

04自己申告制にするなら守る5つのルール

出勤簿への本人記入や日報で運用する場合は「自己申告制」にあたります。ガイドラインは次の5つの措置を求めています。

1

本人に説明する

労働時間の実態を正しく記録し、適正に申告することを、対象の従業員に十分説明する

2

管理者に説明する

実際に労働時間を管理する上司にも、自己申告制の正しい運用を十分説明する

3

実態を調べて補正する

申告と実際が合っているか、必要に応じて実態調査を行い、ずれがあれば労働時間を補正する

4

在社時間との差を確認する

入退室記録やPCログと申告に大きな差があれば理由を確認。「自主的な残業」でも指示があれば労働時間

5

申告を邪魔しない

「残業は月○時間まで」と申告に上限を設けるなど、正しい申告を妨げる措置をとらない

実務の目安:手書きの出勤簿で運用するなら、①出勤簿の様式に始業・終業・休憩の時刻欄を設ける、②本人が毎日記入し、上司が毎日または毎週確認印を押す、③月末に上司が残業の有無と理由を確認する、の3点をルール化すると、上の5つをほぼ満たせます。

ガイドラインの原文を確認する
「上記(2)の方法によることなく、自己申告制によりこれを行わざるを得ない場合、使用者は次の措置を講ずること。ア 自己申告制の対象となる労働者に対して、本ガイドラインを踏まえ、労働時間の実態を正しく記録し、適正に自己申告を行うことなどについて十分な説明を行うこと。イ 実際に労働時間を管理する者に対して、自己申告制の適正な運用を含め、本ガイドラインに従い講ずべき措置について十分な説明を行うこと。ウ 自己申告により把握した労働時間が実際の労働時間と合致しているか否かについて、必要に応じて実態調査を実施し、所要の労働時間の補正をすること。(略)オ 自己申告制は、労働者による適正な申告を前提として成り立つものである。このため、使用者は、労働者が自己申告できる時間外労働の時間数に上限を設け、上限を超える申告を認めない等、労働者による労働時間の適正な申告を阻害する措置を講じてはならないこと。」ガイドライン 4(3)(厚生労働省 PDF

05賃金台帳に必ず書く8つの項目

法律で決まっているのは「何を書くか」です。8項目が揃っていれば、Excel でも給与ソフトの出力でも賃金台帳として認められます。

賃金台帳の帳簿を中央に置き、8つの記載項目を「だれ」「どれだけ働いたか」「いくら払ったか」の3グループに分けて示した図
図4 8項目は「だれ」「どれだけ働いたか」「いくら払ったか」の3グループ。労働時間の記録がないと真ん中のグループが埋まらない(図中の数字は記入例)。
項目書くこと記入のポイント
① 氏名従業員の氏名1人につき1枚(1シート)で作る「各人別」が原則
② 性別男・女
③ 賃金計算期間例:9月1日〜9月30日締め日に合わせる。1か月を超えない日雇いは省略可
④ 労働日数例:20日有給休暇の日は労働日数に含めない(別欄で管理するのが一般的)
⑤ 労働時間数例:168時間実際に働いた時間。第2〜4章の記録から集計する
⑥ 時間外・休日・深夜の労働時間数例:時間外8時間/休日8時間/深夜2時間それぞれ別に書く。割増賃金の計算根拠になる。就業規則の所定労働時間を基準に算定してもよい
⑦ 基本給・手当など賃金の種類ごとの額例:基本給/役職手当/通勤手当/時間外手当「総支給額」だけでは不可。手当ごとに分ける。現物支給があれば評価額を書く
⑧ 控除した額例:健康保険/厚生年金/雇用保険/所得税/住民税法定控除・協定控除ごとに書く

実際の台帳のイメージは次のとおりです(1人・1か月分)。

賃金台帳(様式第20号のイメージ) 氏名:○○ ○○ 性別:男
③ 賃金計算期間2026年9月1日 〜 9月30日(支払日 10月25日)
④ 労働日数20 日
⑤ 労働時間数168 時間
⑥ 時間外労働時間数8 時間
⑥ 休日労働時間数8 時間
⑥ 深夜労働時間数2 時間
⑦ 基本給250,000 円
⑦ 通勤手当10,000 円
⑦ 時間外手当・休日手当・深夜手当(それぞれの額)
⑧ 控除(健康保険・厚生年金・雇用保険・所得税・住民税)(それぞれの額)
差引支給額(合計)

※ 数字は記入例です。様式第20号(常用労働者用)・第21号(日雇用)は厚生労働省の「主要様式ダウンロードコーナー」から入手できます。

形式は自由:法律上は様式第20号で作ることになっていますが、8項目が揃っていれば横書き・Excel・給与ソフトの帳票でも構いません。多くの給与ソフトには「賃金台帳」の出力機能があり、勤怠アプリと連携すれば⑤⑥が自動で入ります。

例外:管理監督者など労働時間の規制が及ばない人については、⑤労働時間数と⑥の欄は法律上省略できます。ただし深夜割増は管理監督者にも必要なので、深夜労働時間数は記入しておくことをおすすめします。

条文を確認する
「使用者は、法第百八条の規定によつて、次に掲げる事項を労働者各人別に賃金台帳に記入しなければならない。一 氏名 二 性別 三 賃金計算期間 四 労働日数 五 労働時間数 六 法第三十三条若しくは法第三十六条第一項の規定によつて労働時間を延長し、若しくは休日に労働させた場合又は午後十時から午前五時(略)までの間に労働させた場合には、その延長時間数、休日労働時間数及び深夜労働時間数 七 基本給、手当その他賃金の種類毎にその額 八 法第二十四条第一項の規定によつて賃金の一部を控除した場合には、その額」労働基準法施行規則第54条第1項(e-Gov 法令検索
「前項第六号の労働時間数は当該事業場の就業規則において法の規定に異なる所定労働時間又は休日の定をした場合には、その就業規則に基いて算定する労働時間数を以てこれに代えることができる。」「法第四十一条各号のいずれかに該当する労働者及び法第四十一条の二第一項の規定により労働させる労働者については第一項第五号及び第六号は、これを記入することを要しない。」同条第2項・第5項(同上)
「法第百八条の規定による賃金台帳は、常時使用される労働者(一箇月を超えて引続き使用される日々雇い入れられる者を含む。)については様式第二十号日々雇い入れられる者(一箇月を超えて引続き使用される者を除く。)については様式第二十一号によつて、これを調製しなければならない。」労働基準法施行規則第55条(同上)

06毎月の作成手順

給与計算と同じサイクルで回します。台帳は「支払いのたびに、遅れずに」記入するのが法律の要求です。

締め日・集計・計算・記入・支払いと保存、の5つの手順を1本のタイムラインで示した図
図5 締め日 → 集計 → 計算 → 記入 → 支払いと保存。給与明細と台帳の数字が一致していることを確認する。
1

締め日

出勤簿・アプリの記録を締め切る。未記入・打刻漏れは本人と上司で確定させる

2

集計

人ごとに労働日数・労働時間数・時間外・休日・深夜の時間数を数える

3

計算

基本給・各手当・割増賃金(時間外25%以上、休日35%以上、深夜25%以上)・控除を計算

4

記入

8項目を賃金台帳に記入。給与明細と同じ数字か確認する

5

支払いと保存

支払日に支給。台帳と出勤簿等の記録をセットで保存する

集計のしかた(例)

集計項目数え方例(所定 1日8時間・週休2日)
労働日数実際に出勤した日を数える20日
労働時間数日ごとの(終業−始業−休憩)を合計168時間
時間外労働時間数1日8時間または週40時間を超えた分8時間
休日労働時間数法定休日(週1日)に働いた時間8時間
深夜労働時間数22時〜翌5時に働いた時間(時間外と重なっても別に数える)2時間

最初の1か月にやること:①記録方法を決めて従業員に説明する(第2〜4章)、②Excel か給与ソフトで台帳の雛形を用意する(第5章)、③初回の締め日に集計→記入まで一度通して、上司と本人の確認の流れを固める。翌月からは同じ手順の繰り返しです。

07保存期間と罰則

作って終わりではなく、保存まで義務です。作らない・書かない・嘘を書く、はいずれも罰則の対象になります。

対象保存期間起算日根拠
賃金台帳3年(法律上は5年。当分の間3年に読み替え)最後に記入した日(支払日が後ならその日)労基法109条・附則143条、労基則56条
出勤簿・タイムカード等の労働時間の記録3年(同上)その記録が完結した日労基法109条、労基則56条
労働者名簿3年(同上)退職・死亡の日労基法107条・109条
労働時間の状況の記録(健康管理のため)3年労働安全衛生規則52条の7の3
未払い賃金の時効
3年
従業員は3年分の残業代をさかのぼって請求できる(労基法115条・附則143条)。記録がないと会社側が反証できない
賃金台帳・保存の義務違反
30万円以下の罰金
台帳を作らない、必要事項を書かない、保存しない(労基法108・109条 → 120条)
虚偽の記入・虚偽の提出
30万円以下の罰金
故意に虚偽の労働時間数を記入する、監督官に虚偽の帳簿を出す(労基法120条)。是正勧告・企業名公表のリスクも

実務上のおすすめ:保存期間は「当分の間3年」ですが、法律の本則は5年で、いずれ経過措置が終わる見込みです。最初から5年保存にしておけば、後から運用を変える必要がありません。

条文を確認する
「使用者は、労働者名簿、賃金台帳及び雇入れ、解雇、災害補償、賃金その他労働関係に関する重要な書類を五年間保存しなければならない。」労働基準法第109条(e-Gov 法令検索
「第百九条の規定の適用については、当分の間、同条中「五年間」とあるのは、「三年間」とする。」労働基準法附則第143条第1項(同上)
「法第百九条の規定による記録を保存すべき期間の計算についての起算日は次のとおりとする。(略)二 賃金台帳については、最後の記入をした日(略)五 賃金その他労働関係に関する重要な書類については、その完結の日」「前項の規定にかかわらず、賃金台帳又は賃金その他労働関係に関する重要な書類を保存すべき期間の計算については、当該記録に係る賃金の支払期日が同項第二号又は第五号に掲げる日より遅い場合には、当該支払期日を起算日とする。」労働基準法施行規則第56条(e-Gov 法令検索
「次の各号のいずれかに該当する者は、三十万円以下の罰金に処する。一 (略)第百六条から第百九条までの規定に違反した者(略)四 第百一条(略)の規定による労働基準監督官(略)の臨検を拒み、妨げ、若しくは忌避し、その尋問に対して陳述をせず、若しくは虚偽の陳述をし、帳簿書類の提出をせず、又は虚偽の記載をした帳簿書類の提出をした者」労働基準法第120条(同上)
「賃金台帳にこれらの事項を記入していない場合や、故意に賃金台帳に虚偽の労働時間数を記入した場合は、同法第120条に基づき、30万円以下の罰金に処されること。」ガイドライン 4(4)(厚生労働省 PDF

08今日から始めるチェックリスト

上から順に進めれば、最初の給与計算までに賃金台帳が整います。

  1. 記録方法を1つ決めた(勤怠アプリ/PCログ/出勤簿の手書き+上司確認 など)
  2. 出勤簿や日報に始業・終業・休憩の時刻欄がある(「○」だけになっていない)
  3. 自己申告で運用するなら、本人と上司に説明し、上限設定などの申告制限をしていない
  4. 賃金台帳の雛形(Excel/給与ソフト)に8項目が揃っている
  5. 台帳は従業員1人ごとに作り、給与を払うたびに記入している
  6. 時間外・休日・深夜の時間数を別々に集計し、割増賃金の計算に使っている
  7. 過去の期間について、残っている資料から労働時間を復元し、未払いがないか確認した
  8. 賃金台帳・出勤簿等を3年以上(できれば5年)保存する場所とルールを決めた

09根拠条文一覧

本ページの記述の根拠です。条文はすべて e-Gov 法令検索の現行法令、ガイドラインは厚生労働省の公開 PDF から取得しました。

根拠内容出典
労基法107条労働者名簿の調製e-Gov
労基法108条賃金台帳の調製・賃金支払の都度遅滞なく記入e-Gov
労基法109条・附則143条1項賃金台帳等の保存 5年(当分の間 3年)e-Gov
労基法115条・附則143条3項賃金請求権の消滅時効 5年(当分の間 3年)e-Gov
労基法120条108条・109条違反、虚偽の帳簿提出等 → 30万円以下の罰金e-Gov
労基則54条賃金台帳の記載事項8項目、就業規則基準の算定、管理監督者等の省略e-Gov
労基則55条様式第20号(常用)・第21号(日雇)e-Gov
労基則56条保存期間の起算日(賃金台帳は最後の記入日、支払期日が遅ければ支払期日)e-Gov
安衛法66条の8の3・安衛則52条の7の3労働時間の状況の把握(タイムカード・PC使用時間の記録等の客観的方法)と記録の3年保存e-Gov(法)e-Gov(則)
労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン(平成29年1月20日)始業・終業時刻の記録、原則的方法(現認・客観的記録)、自己申告制の5措置、賃金台帳の適正な調製、記録の保存厚労省PDF

※ 二次情報として扱った事項:割増率(時間外25%・休日35%・深夜25%)は労基法37条と政令の一般的な内容、勤怠アプリの価格帯、「法定三帳簿」という呼称、様式のダウンロード先。管理監督者の深夜割増は一般的な行政解釈に基づく実務上の推奨です。

結論

  1. タイムカードは義務ではありません。義務なのは「日ごとの始業・終業時刻の記録」と、それをもとにした「労働時間数・賃金を書いた賃金台帳」です。まず記録方法を1つ決めてください(推奨は勤怠アプリ、最低限は時刻欄つき出勤簿+上司の確認)。
  2. 賃金台帳は8項目が揃えば形式は自由。様式第20号を雛形に Excel か給与ソフトで、従業員1人ごとに、給与を払うたびに記入します。
  3. 過去分の復元と未払いの確認、3年(できれば5年)の保存までがセットです。作らない・書かない・虚偽を書くは30万円以下の罰金の対象で、記録がないと残業代請求にも反証できません。